2009年11月30日月曜日

道の人生学校


ある日、私は歩いていた

近所のオモチャ屋さんの前....いつもの男の浮浪者の方が座っている
ポッケに2ユーロ....その方へ...
その人は私の手を取り、優しく手の甲にキスをした
でも、次の瞬間には手を離して
その方は夕方の空を仰ぎながら....何度も十字を切り
泣きそうな目で感謝の祈りを唱えていた
お嬢さん、よい夜をお過ごし下さい....と言ってくれた

そして、私は坂道を下っていた

後ろから高いヒールが「カッカッ」と急ぎ足の音が聞こえる
通り過ぎた瞬間、とても良い香りがした
美しいコートに華奢なヒールの女性....素敵だな...と思った瞬間
彼女は何かを落とし、かがんだ瞬間に
銀の指輪が道に転がった
私は拾って「はい、どうぞ....」と言う前に、
彼女は私の手から指輪を奪い取るようにして行ってしまった
私が....盗もうとしていたと思ったのだろう
彼女の奇麗な後ろ姿が....ぼんやりに霞んだ

そして、私は坂道を上がっていた

おや、あれは同じ音楽学校のシュミットさんだ
シュミットさん、シュミットさん!と声をかけると
「おお!ミオ!こんな所で出逢うなんて、僕はとても嬉しいよ!元気かい?」と
両手をあげて笑顔でビズをしてくれた
95歳のシュミットさん、いつも粋なスーツを着て帽子をかぶって
ゆっくりお散歩をしている
「僕はね、人生経験は沢山あるけれど音楽経験はまだまだ。これからも勉強するよ」と言った
そして
「それでは......さようなら、僕の小さなお花、また逢いましょう」と微笑んで言ってくれた


同じ道で、3人の人に逢った
しんみり、落ち込み、笑顔、
.....この3つの顔が30分の中にあった坂道だった

まるでアンデルセンの小話のようだった