2010年9月3日金曜日

ピアノ、身体の奥






今回、夏の間と丸2日を掛けてピアノの内部の最終調整と修理を
「PIANOS BALLERON」の明子さん、シルヴィーさんにして頂いた
彼女はパリでも少なくなってしまった戦前のピアノ修復や調律をしてくれる
アトリエで職人をする日本人の友人だ(詳細は右のリンクからどうぞ)

ピアニストは(私も含めて)ピアノの内部構造をよくよく存じる機会が
よっぽどの機会が無い限り難しく
中にはそういうものに興味を示さない音楽家も多くいる。

当たり前のように、ピアノの前に座って弾くことが日常であるのに
今回、明子さんが鍵盤の1つ1つを丁寧に直して下さったものが無ければ
ピアノは根っから動くことが不可能である。
しかし、知らずとも生きてゆけるが....私は自分のピアノの身体をもっともっと
知りたい、知らなければいけないと感じだ。
要は無知な自分をしる機会になった

ピアノを当たり前に弾く
その裏では職人さんが1つ1つ手で時間を掛けて...
ピアノの身体を治療して修復してくれるからこそピアニストの音に命が生まれる元水が湧く

明子さんとお話していた時
音楽学校でも、ただ演奏や技法に力を入れるだけではなく
ピアノの構造を勉強する時間もあったらいいのに、と言うこと

そして以前もこちらで活躍するピアニストの方が
何故、音楽学校では姿勢法、呼吸法を取り入れた授業が無いのか、
という話になったことがある

今回、丸2日...ピアノの内部に向われる真摯な明子さんの姿を見ては
「自分は子供の頃からピアノをやって来たといえども
本当は何にも知らずに来てしまったのだ」とつくづく心に刺さった

ピアノは通常88鍵、その1つの鍵に対して8つの調整段階があるので
調整で最低704回は鍵盤に向うのである....

今回70年以上振りにピアノの身体の内部を修復して頂いた

ピアノも喜んでいるのだろうな...

戦前生まれ、そして私が引っ越すアパルトマンは常に湿気が多くカビだらけ
極めつけに3年前に天上が裂けて水漏れがあり、当時パリを1ヶ月不在にしていたこともあり
私のピアノは本当のオンボロピアノになってしまっていた

ピアノを弾く私はそれでも24歳くらいまで自分のピアノを持ったことがなかった
祖母のものであって気兼ねをして練習していた子供時代
レンタルで借りていた音大生時代

このピアノが私にとって唯一だった

あの時、家に足を入れた途端...ピアノはカビで真っ白、カーペットにコケと虫が沸き
楽譜も水で痛んでしまい呆然として立ち尽くした

あれから3年、私のザイラーは元気になってくれた
私よりも色々な時代を見て、戦時中も生きてきたピアノ

明日からまた新しい気持ちで2010年にザイラーと向き合うことが出来る
これからもよろしく

1つ1つを大切に修復して温かい笑顔で運んで下さったシルヴィーさんと明子さんに
心から感謝を

Je remercie beaucoup .... Sylvie et Akiko du fond du coeur....!