2010年7月27日火曜日

小さな心、小さな怪獣


ある日、ピアノの生徒さんのレッスンを終えメトロに夜乗っていた
一駅で乗り換えだから...と思いドア付近に立っていたら
後ろからポンポンと叩いてくるので振り返ったら...小学くらいの小さな男の子が
「マドゥモワゼル、僕の隣が空いているので座って」と笑顔で言ってくれた
丁寧にも補助椅子を座れるように手で押さえてくれていた
「メルシー」と笑顔で答えて有難く座らせてもらった

心の中で...嬉しいな、優しい子だな... ...せっかく座らせてもらったのに
一駅で降りるなんて...ちょっと寂しいかな、悪いかな...どこかで乗り換えがあるだろうから
何駅か一緒に乗っていよう...と思った

夜なのにこの男の子ひとりで乗っているのかしら?と親らしき人を目で探したが見当たらない
男の子はクシャミをした後に私にニコッと笑った
父親らしき人が向いの補助席に座っていた
父親に見えなかったのは彼の歳がかなりの年配者だったから...でもどう見ても祖父ではない
スーパーのビニール袋から小さな怪獣を出して男の子に渡した
とても喜んでその怪獣を手で上げたり下げたり...楽しそう

きっとこの父親は多くの優しい心を息子に与えて育てているのだろうな...と想像していた
その2人が降りる時に
私に小さな手を振って男の子は遠くなって行った

なんだか日びの重荷がフワッと軽くなった瞬間だった

その後...自分が降りる乗り換え駅が無いことに気が付き...しまった!と思った
遠回りをして帰った夜だったが
心は優しい夕陽みたいだった