2015年7月18日土曜日

藤色の、美しいひとよ


























(大好きなメリーポピンズより)








黒い雲のトンネルの先には明るい夕闇がある

ひまわりのような娘に
小さなひまわりのお土産を持って
小雨の中、家路につく

しかし
どんどん、雨が強くなり
麦わら帽子ではどうにも無くなって来た

足早に傘をさす人々を追い越しながら
家に着く頃はビショビショだなぁ...などと思っていた

目の前に素敵な夏の半袖ブラウスを来たおばあさん
歩幅を大きくして追い越して2,3歩前に進んだ時


「この傘、さして行って...!」

振り向くと....後ろから
おばあさんがご自分がさしていた傘を私に差し出した

「あ...でも、濡れてしまいますし...」

「このような傘はいくらでもあるの
私の家はこの路地の脇にあるから
 この傘、さして行って!」


「ありがとうございます...必ずお返しに行きますので」

「ううん、いらないから、
 あなたのお花と素敵な帽子が濡れてしまうから、ほら」













おばあさんが私に差し出してくれた傘は
藤色の素敵な傘でした

姿が見えなくなるまで小走りで行ってしまったおばあさんを
見送りました


それから少しして雨はやんだけれど
私は
その傘を胸いっぱいになりながら
握りしめて、さしたままでした





どんな高価な花束よりも
庭で摘んで来てくれた花々を演奏の後に頂いた時

その
優しさの心の重みを....若さ故に理解出来ずにいた頃

歳を重ねて意味を知って涙した日を思い出した





藤色の傘は
おばあさんがアヤメの花束を私にくれたのね


そのおばあさんは
夕闇の中で銀色の長い髪の毛をアップにしていて
雨に濡れていて

美しかった、な


もしかしたら
夕闇の国のひとだったのかしら






明日からの心に
より燈火がたぎる


しずかな雨の日






藤色の、美しいひとよ

今日の終わりの、微笑みの種よ