

真夜中の霧雨の中
誰かが口笛を吹いていた
私は
どんな日も、こういう時間が好きだろう
少し寝坊してピアノに向かう
いつもの赤い傘をかぶって(さして)レッスンに通う
今までのレパートリーにスクリャービンを加えてよいか
恐る恐る先生に尋ねる
6月の予定が秋遅くのシーズンに変更になりそうだ
霧雨の夜にスクリャービンの曲を想像する
こういう日は幸せだった
一人で静かに
音と人に想いを寄せ過ごす
多くの人といることが苦手だから
いつもピアノの近くでひっそりと誕生日を向かえることが私は好きだった
そしてこれからも
支えてくれた、そして有り難みを忘れずに
雨の日の階段を上る
雨は心の涙、思い出、心のうた、
そして今
心、生活の貧しさを尊ぶ日に