2011年11月4日金曜日

太陽と月 le soleil et la lune




「俺はね、彼とは誰よりも人生の中で長く一緒に過ごし生きて来たんだ

だから注射一本で楽にしてあげることよりも、このまま衰弱しながらも

最後まで共にいたんだ......それは俺のエゴかい...?」


秋の曇り空を見ながらシャンソンの師匠ミッシェルは言う


夏、日本ツアーの前にミッシェルの家を訪れた以来
モンマルトルを久々に歩く


親、家族、息子、奥様、友人、彼らよりも
猫との生活が誰よりも長い生活

きっと次回、師匠のアパルトマンを尋ねる時
もう猫のキウイはいないのだな...と思う

25歳のキウイ

美しい白くなった瞳は、今まで何を映して来たのだろう



夏にテレビに出て、youtubeにアップして頂いたものをミッシェルに教えた

「おまえ、いいね。あがっているのがわかる。でも、俺は凄く嬉しいよ」と
喜んでくれた

ちゃんと生きているのか、と訊ねて来た
少しでも音楽で生きること、稼ぐこと、今後もパリに住みたいこと
久々に心置きなく話せるミッシェル


「ミオ、お前はパリに「住みたい」のではなくパリで「生きたい」のだろう?

そして確かに生きる為にはお金は必要だ

しかし、きっとお前はもっと人生をプロフィテした方がいい

....しばられるな」



プロフィテ(Profiter)は日本語の表現にはない言葉だ
よくフランス人が以前言っていた

プロフィテ、日本語訳は「利用する、活用する、利益をもたらす」であるが
実際、日本語にしてしまうとムズムズするような違和感がある

よく人生や、太陽にも使う





師匠の小さなベットの上で猫のキウイが呼吸を苦しそうに横になっている

フランスに来た約12年前、初めてミッシェルのアパルトマンへ行った時
一番始めに出迎えてくれたのがキウイだった
まだシャンソンの「シャ」の字も、フランス語の「フ」の字も知らない頃

そして日びが流れ、私がテレビでフランス語でシャンソンを歌う姿がある時
キウイはあと2週間の命のほとりにいた



ミッシェルと別れて
夕方のモンマルトルを秋風が私を包み
長い漆黒色の影を追いかけて
家路に着くのだ


家にはミロンガが「にゃお」と待っている
それは日本を離れてから
家族、友人たち、恋人よりも誰よりも一緒に過ごしている猫だ


師匠がこの地球を覆う大空であったならば
私はまだポカンと空に浮かぶ小さい雲だ


次回、弾き語りに挑戦するシャルル トレネの「le soleil et la lune(太陽と月)」
滑稽なリズミカルな歌

人生に於いて、喜び、悲しみ、苦しみ、楽しみが伴うときも

私は
滑稽な楽しい歌を
心から演じてゆく人生の流れを歩みたい

己の終焉の日がやって来て過ぎて行っても
太陽と月は人を照らすものなのだから


音楽家として
太陽でも月でもあり続けたい




シャルル トレネ「le soleil et la lune」
http://www.youtube.com/watch?v=xKO7DbqRPAI